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禁忌の精神外科、ロボトミー手術を題材にした映画5選

2021.01.24 12:12

  • #映画まとめ
目次

禁忌の精神外科、ロボトミー手術とは?

1.『シャッター・アイランド』精神病院のロボトミー手術疑惑に迫る

2.『グレイヴ・エンカウンターズ』ロボトミー手術を行う病院が舞台のPOVホラー

3.『エンジェル ウォーズ』少女はロボトミー手術を回避できるか?

4.『カッコーの巣の上で』不朽の名作ロボトミー手術映画

5.『ラチェッド』「カッコーの巣の上で」の悪役にフォーカスしたドラマ

おわりに。ロボトミー手術をテーマにした映画を観てみよう


禁忌の精神外科、ロボトミー手術とは?

ロボトミー手術とは、精神疾患を持つ患者の前頭葉と視床を物理的に切り離すことにより、病状を抑えようとする外科手術だ。中でも、アイスピックを眼の隙間から刺しこみ、脳の一部を切除する「経眼窩ロボトミー手術」は有名だ。


患者の人格変化や無気力化などの副作用が見られるこの手術は、現在では「呪われた手術」と言われているが、投薬治療が一般的でなかった時代、医師たちは外科手術による精神疾患の治療方法を模索していた。実際、ロボトミー手術は、第二次大戦から戦後にかけてアメリカで大流行していたという。


そんな闇の歴史があるロボトミー手術は、映画のテーマとして取り上げられることも多い。 今回は、禁忌の精神外科、ロボトミー手術を題材にした映画をご紹介していく。


1.『シャッター・アイランド』精神病院のロボトミー手術疑惑に迫る


『シャッター・アイランド』は、マーティン・スコセッシ監督による2010年のアメリカ映画だ。レオナルド・ディカプリオ演じる主人公テディ・ダニエルズは、女性の行方不明事件調査のためシャッターアイランドと呼ばれる孤島にあるアッシュクリフ精神病院を訪れる。調査を進めるうちに、この病院では現在違法とされている「ロボトミー手術」が行われていることが判明。そんな中、テディは自らに隠されたとある疑惑に直面する...


『シャッター・アイランド』の舞台は1954年のアメリカだ。この時代は、実際にロボトミー手術が廃止になりつつあった時期でもある。 「人間から感情を奪うロボトミー手術」がテーマになっているこの映画は、何が事実で何が妄想なのかわからなくなる難解さや、ラストのどんでん返しが売りとなっている。 見終わった後に「答え合わせ」をしたくなること間違いなしだ。


2.『グレイヴ・エンカウンターズ』ロボトミー手術を行う病院が舞台のPOVホラー


『グレイヴ・エンカウンターズ』は、2011年公開のカナダのホラー映画だ。超常現象番組『グレイヴ・エンカウンターズ』のスタッフが、廃墟となった精神病院に潜入する企画...という体で撮影されているため、常にスタッフによる一人称のカメラ視点で描かれるPOV作品となっている。


そして、この映画の舞台となる廃墟も、ロボトミー手術が行われていた精神病院だ。かつてロボトミー手術を執り行っていた医者やロボトミー手術を受けた患者が幽霊として現れ、主人公の精神を削り取っていく。しまいには、主人公も患者とみなされてしまい...


結末は、ご自身の目で確かめてほしい。ちなみに結構怖いので、ホラーが苦手な方はご注意を。


3.『エンジェル ウォーズ』少女はロボトミー手術を回避できるか?

『エンジェル ウォーズ』は、2011年に制作されたアメリカのアクション映画だ。舞台はロボトミー手術が廃止に向かい始めた1950年代。エミリー・ブラウニング演じる主人公の少女・ベイビードールは、継父によって無理やり精神病院へ監禁され、5日後にロボトミー手術を受けることになってしまう。ベイビードールは精神病患者の仲間と協力し、精神病院から抜け出すためのアイテムを集める。


ロボトミー手術×アクションという意外な掛け合わせのこの映画は、『シャッター・アイランド』と同様「現実と妄想の区別が付かなくなる映画」だ。実際、脱出に必要なアイテムを手に入れる道中はすべて、主人公の想像上の世界として描かれている。セーラー服やサムライ、ロボットなどが登場する破天荒なアクション映画ではあるものの、見終わったあとに「主人公は本当に精神病院から抜け出せたのか?」と考え直したくなる作品となっている。


4.『カッコーの巣の上で』不朽の名作ロボトミー手術映画

『カッコーの巣の上で』は、1975年のアメリカ映画で、ケン・キージーが1962年に発表した同名の小説が原作となっている。アメリカで興行収入1億ドルを超える大ヒットとなったこの映画は、刑務所から逃れるために精神疾患を装って精神病院に入院してきた主人公・マクマーフィーが、病院の束縛から逃れようとする物語だ。


当作品が公開されたとき、ロボトミー手術は廃止に向かいつつも、まだ存続していた。 そんな中、精神病院運営の問題点とロボトミー手術の危険性の両面を描いたこの作品は、ロボトミー手術の廃止を後押ししたと評価されている。


30年以上前の映画ではあるものの、人の感情を殺すロボトミー手術の非人道性を再確認できる貴重な作品となっている。


5.『ラチェッド』「カッコーの巣の上で」の悪役にフォーカスしたドラマ

『ラチェッド』は、映画『カッコーの巣の上で』に登場する悪役の看護師を主人公にしたNetflixのドラマ作品だ。名作『カッコーの巣の上で』の前日譚、という難しいテーマに挑んだこの作品は、精神医療の問題に対して問いを投げかけてくれる。とはいえ、『アメリカン・ホラー・ストーリー』の製作総指揮ライアン・マーフィーによる新作であるため、ホラー要素もふんだんに盛り込まれている。


なお、ロボトミー手術の様子がはっきりと描かれるなど、グロテスクな要素もあるため、耐性のない人は注意。


『ラチェッド』は、シーズン2の公開も決まっており、今後の展開にも期待したい。


おわりに。ロボトミー手術を題材にした映画を観てみよう

ロボトミー手術と一口にいえど、アクションからヒューマンドラマ、サスペンスまで様々な映画がある。それぞれ違った視点でロボトミー手術を捉えており、見比べてみるのも面白い。


なお、ロボトミー手術を考案したエガス・モニスは、なんと1949年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。史上最悪のノーベル賞とも言われているこの業績は、ロボトミー手術が廃止されて30年以上が経ったいまも剥奪されていない。


人間から感情や意思を奪いとるロボトミー手術について、今回ご紹介した映画を通して考えてみてはいかがだろうか。