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『農業用ドローンが拓く未来』~ドローン市場拡大の理由や活用事例、注目のドローンメーカーを紹介~

2021.01.07 16:04

  • #ドローン
  • #ベンチャー企業
目次

1. いま、農業に変革が求められる理由

2. 精密農業におけるドローンの位置付け

3. 農業でのドローン活用事例

4. ドローン市場の今後とプレイヤーたち


いま、農業に変革が求められる理由

いま、COVID-19のパンデミックにより、農業界では改革が求められている。


ウイルス感染拡大防止目的での移動制限等の理由から、農業では様々な国や地域で労働者不足に見舞われている。特に多くの労働者を必要とする "手作業" の工程では、生産性の低い状態が数カ月間続き、大きな損失に繋がっているという。


このような状況を受け、農業界で期待が高まっているのが農業用ドローンや農業ロボットだ。


また、国際連合(UN)によれば、世界の総人口は現在77億人であるのに対して、2050年には96憶人に達すると予測されている。

人口増加に伴う食料の生産・供給量は、現在の2倍に達する見込みだ。


それゆえ、生産性向上による収穫量最大化や、利用可能面積が限られる農地をいかにして有効活用するかといった点が、農業界が今後発展していくための課題となっている。


そんな課題を打破するし、市場の成長を促進する技術が、ドローンを駆使した精密農業である。


なお、経済協力開発機構(OECD)のAgriclture Outlook 2019によると、今後10年間における農業生産量は15%上昇すると予想されている。


出典:bunshun.jp


精密農業におけるドローンの位置付け

精密農業とは、ICTやIoT、AIを活用して作物に関する情報の取得・解析を行うことにより、科学的な観点から自然を解明し、肥料や水といったコストの最適化に加え、収穫量最大化を目指す意思決定の総称である。


現状の農機具メーカーは、GPSを用いた自動運転や衛星写真を用いたジオマッピングなど、様々な機能の提供により農業のデジタル化を進めている。


しかし、ドローンを駆使した農業は、農機具メーカーにとって未開拓の分野だ。

その理由は、ハード面でのドローン開発に着手できていないからだという。


とはいえ、全自動ロボット耕うん機や自動走行コンバインといった農機具のIoT化は、ドローンと比較して莫大なコストを必要とするため、個人事業主のにとって導入課題が多い。


したがって、ドローンを活用した精密農業は安価かつ最適なソリューションとして注目されている。


出典:kubota


農業でのドローン活用事例

ドローンを駆使した農業で真っ先に思いつくのは、おそらく上空からの農薬散布だろう。

しかし、ドローンの活用方法はそれだけに止まらない。


実際のところ、カートリッジ交換的にカメラやセンサー等を組み合わせることで、様々なソリューションが実現可能となる。


例えば、ドローンに搭載したカメラやセンサーで上空から農地を撮影し、画像データと地理情報を集約した三次元マップを作成することで、作物の健康状態把握に加え、土壌分析や生育状況の確認による収穫量最大化を目指すことが可能だ。


さらに、センシング技術を応用すれば、適切なタイミングでの肥料・除草剤の散布や、害虫から被害を受けた部分のみの局所的な農薬散布、鳥獣対策をすることもできる。


ここで、実際の事例を2点ほど紹介したい。


1.画像センシングによる植物の最適化。


イリノイ大学の研究によると、ドローンのイメージ画像とAIを活用することで、大豆の成熟度合を2日以内に予測し、品種改良を行えるという。


従来の品種改良の評価には非常に時間がかかり、エラーも発生しやすいという課題があった。


しかし、この技術を応用することで、毎日ブーツを履いて畑に出向き、熱心に食物の生育を見守るといった従来の改良作業は不要となる。


また、早期収穫可能で収益最大化に繋がる新種の発見が、人間の偏見に左右されることなく、正確でスピーディーに完了できるという。

出典:agrinews


2.ドローンを活用した森林再生。


ドローンのスタートアップ企業DroneSeed、2019年に森林再生事業として、ドローンに搭載したカメラで上空から植林用地を撮影し、画像データと地理情報を集約した三次元マップを作成した。


また、樹種や土壌などから、樹木が生育しやすい場所をセンチメートル単位で精緻に特定。

ドローンが自律飛行し、種子に肥料や病害虫防除剤を混ぜた特殊カプセルを上空から散布することで、森林火災で失われた森林の再生に取り組んでいる。


出典:DroneSeed


ドローン市場の今後とプレイヤーたち

冒頭で述べたとおり、新型コロナウイルス感染拡大により、ドローン農業に注目が集まっている。


2024年までにドローン農業市場は10億米ドル(1100億円規模)を超えると推定されており、出荷台数は200台を突破すると考えられている。


認知拡大による農業目的でのドローン使用の増加や、メーカーが多額の資金調達に成功していることで農業用ドローンの市場が急拡大すると予想されるためだ。


最後に、今後ドローン市場でのメインプレイヤーとなるであろう中国の企業を2社ご紹介したい。

1.DJI

DJIは、2005年、香港科技大学を卒業した汪滔らによって創業されたドローンの製造会社だ。


アメリカのホワイトハウスにDJIのドローンが侵入していたことが話題になり、注目を集めたが、後に泥酔したシークレットサービス職員によるものと判明した。大手家電量販店のドローンコーナーで見かける企業でもあり、なじみ深い方もいるかもしれない。


同社の新型農業用ドローンAGRAS T20は、全方向デジタルレーダーを搭載しており、農地の障害物を全水平方向から検知可能。

また、耐久性も従来品より向上したほか、次世代スマート送信機を装備している。

価格は約160万円ほど。

購入などのお問い合わせはこちらから可能だ。


2.XAG

XAGは、2007年4月に設立された中国広東省の企業で、DJIに並ぶ農業用ドローンメーカーだ。

なお、中国の農業用ドローン市場では、両社のシェアが合計9割近くを占めている。


XAGの特徴は、DJIと異なり、農業や産業用ドローンに特化している点だ。


同社の新型農業用ドローンPolar V40は、他ドローンと異なりプロペラが2枚という特徴を持つ。 これにより細かなフライトが可能になっているという。

また、バッテリーを11分で30%から95%まで急速充電できる技術を備えている点にも注目したい。


現段階では販売時期は未定だが、詳細はこちらから確認できる。